Radeon 890M ベンチマーク:平均FPS/1% Low/おすすめ設定

Radeon 890M は、Ryzen AI 300 世代における AMD の最上位クラスの統合 GPU(iGPU)です。競技系タイトルでは高いフレームレートを狙え、さまざまなゲームで 1080p の実用的なパフォーマンスも期待できます。ただし体感は、電力制限・冷却性能・メモリ帯域に強く左右されます。
免責:本検証に使った参照用ミニPC(ACEMAGIC F5A)は、当社が展開するブランド製品です。
本記事の数値は、参照動画に表示されるオンスクリーン・オーバーレイから取得した「平均FPS」と「1% Low(下位 1% の最低側 FPS)」の実測値です。
以下のベンチマークはすべて、アップスケーリングなし/フレーム生成なしの「ネイティブ描画」です。
ベンチマーク・オーバーレイの動画ソース:
Radeon 890M とは?
Radeon 890M は、Ryzen AI 300 シリーズの一部プロセッサーに内蔵される統合 GPU です。RDNA 3.5 アーキテクチャを採用し、性能はプラットフォーム全体の作りに応じて伸び縮みします。具体的には、APU がどれだけの電力を持続できるか、筐体がどれだけ熱を逃がせるか、そしてシステムがどれだけのメモリ帯域を確保できるかが効いてきます。
旧世代の AMD iGPU から乗り換える場合、目安は次のとおりです。
- 890M は、この世代の iGPU で最上位クラスに位置します。
- 軽量・最適化が進んだタイトルなら 1440p ネイティブも現実的ですが、重めのゲームで安定した 1% Low を重視するなら 1080p が安全圏です。
なぜ「同じ 890M」でも機種で結果が大きく変わるのか
“Radeon 890M 搭載”を謳うノートPCやミニPCでも、FPS がまちまちに見えることがあります。iGPU ではむしろ自然なことです。
主な理由は次のとおりです。
- 持続電力と冷却:iGPU は CPU コアと電力・熱設計を共有します。薄型ノートのように発熱でクロックが落ちやすい機種は、ピークの平均FPSが近くても、熱で粘れず 1% Low が下がりがちです。
- メモリ帯域と構成:Radeon 890M は専用VRAMではなくシステムメモリを使います。デュアルチャネルかどうか、メモリ速度が高いかどうかは実FPSに直結し、とくに 1440p で差が出やすくなります。
- ドライバー機能や設定:AFMF(フレーム生成)や HYPR-RX などの機能は、対応状況によって体感の滑らかさを押し上げられます。ただし「ネイティブ描画の基準値」を直接変えるものではありません。比較の出発点としては、まずネイティブのクリーンなベースラインが重要です。
以上を踏まえ、以下のベンチマークは「冷却に余裕のある参照ミニPC 1 台」での 890M の傾向を示します。
テスト環境と数値の見方
参照システム
本記事のベンチマーク表は、参照システムとして ACEMAGIC F5A の結果を採用しています。
これらの結果は、「負荷をかけ続けても性能を維持しやすい設計のミニPC」で Radeon 890M がどんな振る舞いをするか、という実用的なスナップショットとして捉えてください。
本記事の描画ルール
ネイティブ描画のみ
- アップスケーリングなし(FSR / RSR なし)
- フレーム生成なし
ここを揃える理由は、ネイティブがもっとも“素の基準値”として扱えるからです。アップスケーリングやフレーム生成を入れれば FPS は上がり得ますが、画質や遅延(入力レイテンシー)のトレードオフもセットで変わります。
指標
- 平均FPS:全体の処理量(スループット)の目安。
- 1% Low:滑らかさの指標。平均に近いほど安定して感じやすく、平均と離れるほど平均FPSが高くてもカクつきを感じることがあります。
ベンチマーク
以下の表は「ネイティブ描画のベースライン」です。さらに平均FPSや 1% Low を伸ばしたい場合は、表の後にあるチューニング項目を参照してください。
1440p ネイティブ ベンチマーク
ここでは、競技系から負荷の重いタイトルまで、1440p ネイティブで Radeon 890M がどこまで回るかを示しています。この結果セットでは、競技系は 1% Low が比較的安定しやすい一方、大規模・重量級はシーンによるブレが出やすい傾向があります。
平均FPSが良さそうでも 1% Low が弱い場合、まず効くことが多いのは「解像度を下げる」か、「重い設定を 1 つだけ落とす(影、ボリューメトリクス等)」です。まずそこから始めるのが近道です。
| ゲーム | 解像度 | プリセット | 描画 | 平均FPS | 1% Low | 備考 |
| Counter-Strike 2 | 1440p | 中 | ネイティブ | 84 | 61-62 | 競技系。引っかかりは 1% Low で確認 |
| Dota 2 | 1440p | 中 | ネイティブ | 80-82 | 45-46 | シーン負荷で振れやすい |
| Call of Duty: Warzone | 1440p | 基本 | ネイティブ | 56 | 43 | 重め。平均より 1% Low の重要度が高い |
| Gears of War: Reloaded | 1440p | 中 | ネイティブ | 60 | 51-53 | 中量級の現代タイトル |
| The Legend of Zelda: Breath of the Wild | 1440p | Cemu 設定 | ネイティブ | 38-39 | 34 | エミュレーション(後述の注意参照) |
| MotorStorm: Pacific Rift | 1440p | RPCS3 設定 | ネイティブ | 45-46 | 35 | エミュレーション(後述の注意参照) |
1080p ネイティブ ベンチマーク
ここは 1080p の基準値です。より高い平均FPSや、より安定した 1% Low を狙うなら、アップスケーリングやフレーム生成を考える前に「1080p ネイティブ」に落とすのが一番クリーンです。
以下の 2 タイトルは、「負荷の重い最新寄りワークロード」をネイティブ基準で見せる目的で入れています。余裕が欲しい場合は、まずプリセットを 1 段階落とし、それでも足りなければアップスケーリングやフレーム生成を検討してください。AAA をより高設定・高解像度で楽しみたいなら、現実的な次の一手は外付けGPU(eGPU)などのアップグレードパスになります。
| ゲーム | 解像度 | プリセット | 描画 | 平均FPS | 1% Low | 備考 |
| METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER | 1080p | 低 | ネイティブ | 25 | 13-14 | 新しめのタイトル。ネイティブ基準 |
| Cyberpunk 2077 | 1080p | 中 | ネイティブ | 32 | 28 | 実際の滑らかさは 1% Low で判断 |
エミュレーション ベンチマーク
エミュレーション注意:エミュレーターは、PCネイティブのゲーム以上に「設定」で性能が動きます。ここに載せた結果は「チューニングした参照値」として捉えてください。
エミュレーションは別カテゴリです。エミュレーターのバージョン、使用するグラフィックス API、シェーダーコンパイルの挙動、タイトルごとの個別設定で結果が大きく変わります。つまり、これらの数値は「適切に詰めればここまで出せる」という目安であり、すべての環境での保証ではありません。
Radeon 890M でエミュレーションを重視するなら、出発点として次を意識してください。
- 可能なら動画で使われているエミュレーターのバージョンに合わせる
- シェーダースタッターを抑えやすい、安定寄りの API/設定を優先する
- タイトル別の追い込みが、ネイティブ PC ゲームより重要になりやすい
Radeon 890M と Radeon 780M の比較
前世代の上位 iGPU(Radeon 780M)と比べる場合、ハード面の差はシンプルです。
- Radeon 890M:RDNA 3.5、Compute Unit(CU)16基
- Radeon 780M:RDNA 3、CU 12基
実際の伸び幅は確かにありますが、「常に固定の%で上がる」わけではありません。
ゲーム別に見たい場合、同じ参照動画内に Radeon 890M vs Radeon 780M の比較パートがあり、同じ指標(平均FPS/1% Low)で確認できます。この記事の表は 890M の“ネイティブ基準”を作ることに集中しているため、体感の差をざっくり掴むには動画側の比較パートが早いでしょう。なお、同じ iGPU 名でも、片方が電力制限だったり、メモリが遅かったり、熱でクロックが維持できなかったりすれば結果は変わります。
実用的な捉え方としては次のとおりです。
- 1080p で iGPU がボトルネックになっているなら、890M は「設定を上げても粘れる余裕」や「1% Low の安定」を買えることが多い。
- 逆に、特定タイトルで CPU 側がボトルネックなら、差が小さく感じる場合がある。
- 1440p ではメモリ帯域と持続電力の重要度がさらに上がり、iGPU の名前以上に“筐体と構成の質”が効いてくる。
Radeon 890M で「本当に効く」性能改善ポイント
ここは実践重視です。平均FPSと 1% Low の両方に効きやすい順に並べています。
1) まずメモリを正しく組む
iGPU にとって、メモリは“性能パーツ”そのものです。
- デュアルチャネルを使う
- プラットフォームが許す範囲で、より高いメモリ速度を選ぶ
- 容量と速度で迷うなら、まずデュアルチャネルを最優先し、その次に用途に見合う容量を確保する
2) 適切な電源/パフォーマンスモードを使う
多くの機種は、静音やバッテリー持ちを優先した「バランス」寄りのプロファイルが初期設定です。ゲーム用途では持続性能が伸びにくいことがあります。
- 電源接続時は、パフォーマンス/ターボ系のプロファイルを選ぶ
- ファンカーブを触れるなら、短いピークより「安定して回し続ける」ほうが結果的に 1% Low が良くなることが多い
3) ネイティブで整えてから、AFMF とアップスケーリングを検討する
ネイティブの基準値が安定したら、ドライバー機能を試す段階です。
AFMF(AMD Fluid Motion Frames)は、対応ゲームで補間フレームを追加し、体感の滑らかさを上げられる場合があります。ベースのフレームレートがある程度出ていて、ディスプレイが可変リフレッシュレートに対応していると相性が良い傾向があります。
シンプルに考えるなら:
- そもそもベースFPSが足りないなら、まず解像度や設定を落とす
- 既に“そこそこ良いレンジ”に入っていて、さらに動きを滑らかにしたいなら AFMF を試す価値がある
- 入力遅延が最優先(競技プレイ)なら、フレーム生成は慎重に
画質面では:
- 可能ならゲーム内のアップスケーリング設定を優先する
- ゲーム側に良い選択肢がない場合の逃げとして、ドライバー側のスケーリングを使う
おすすめ設定プロファイル
考えすぎずに使える出発点としてまとめます。
プロファイルA:競技系(eスポーツ)向け
- 解像度:1% Low が維持できるなら 1440p、厳しければ 1080p
- プリセット:中設定、または競技向け最適化設定
- 目標:1% Low を安定させ、フレームタイムを揃える
プロファイルB:AAA 向け
- 解像度:1080p
- プリセット:まず中設定から。平均FPSが約 30 前後で頭打ち、または 1% Low が不安定に感じるなら低設定へ、もしくはアップスケーリングを有効化
- 目標:平均FPSを確保しつつ、1% Low のカクつきを抑える
プロファイルC:静音・低温重視
- 解像度:1080p
- プリセット:低〜中
- 目標:ファンノイズを抑えながら安定動作を狙う
Radeon 890M が向いている人
Radeon 890M は、次のような用途に向いた iGPU です。
- コンパクトな筐体で、競技系タイトルを高FPSで遊びたい
- dGPUなしでも、1080p の AAA を中〜低設定(必要ならアップスケーリング併用)で遊びたい
- 後から eGPU で伸ばせる構成(例:OCuLink 搭載ミニPC)を選び、アップグレード余地を残したい
- 仕事用とゲーム用を 1 台でバランスよくこなしたい
一方で、次が目的なら適任ではありません。
- 重い最新 AAA を 1440p 高設定で回したい
- レイトレーシングを主軸にしたい
- 妥協なしのウルトラ設定を常に狙いたい
参照システム例
本記事は Radeon 890M の傾向を語るため、表は“参照スナップショット”として提示しています。実際の結果は、機種が次の 3 要素をどれだけ満たすかで変わります:持続電力/冷却/メモリ帯域。
ACEMAGIC F5A は、その 3 点を意識したミニPC構成の一例です。
ACEMAGIC F5A AMD Ryzen AI 9 HX 370 ミニPC
未来的な筐体でRyzen™ AI 9 HX 370とAMD Radeon™ 890Mのパワーを体験してください。Bluetooth 5.4、WiFi 7、OCuLinkをサポート。
ほどほどのゲーム用途であれば、内蔵の Radeon 890M だけでも幅広いタイトルを現実的な設定で楽しめます。より深いゲーム体験(高設定・高解像度・AAAの快適圏拡大)を狙うなら、F5A は OCuLink ポートを備えているため、対応する eGPU ドック/エンクロージャーと電源を組み合わせて外付けGPUへ拡張する道もあります。
OCuLink eGPU デモ動画:
購入検討中であれば、上のベンチマーク表を「欲しい性能」と「検討しているデバイス種別」の突き合わせに使ってください。
ベンチマーク・オーバーレイの正確な出典は、記事冒頭付近にある動画を参照してください。
FAQ
Radeon 890M は単体GPU(dGPU)ですか?
いいえ。プロセッサー内蔵の統合 GPU です。CPU と電力・冷却枠を共有し、専用 VRAM ではなくシステムメモリを使います。
友だちの 890M ノートは、なぜミニPCと FPS が違うのですか?
iGPU 名だけでは、持続電力制限、冷却、メモリ帯域が分かりません。これらの差が、ピークFPSだけでなく 1% Low まで動かします。
890M は RX 7600M より強いですか?
いいえ。RX 7600M は単体GPUで、8GB の GDDR6 とより大きな電力枠を持つため、より高設定・重いタイトルでの余裕が大きく異なります。
Radeon 890M は、省電力でコンパクトなシステム向けの iGPU です。小型筐体で、現実的な設定の 1080p ゲーミングを狙うなら十分に魅力があります。一方で、純粋にゲーム性能が最優先なら RX 7600M のほうが堅実な選択です。
AMD Radeon 890M と RTX 3050、どちらが良いですか?
ゲーム用途のノートPCでは、RTX 3050 のほうが専用VRAMと高い持続電力枠により、安定した余裕を持ちやすいのが一般的です。Radeon 890M は iGPU としては驚くほど健闘しますが、高設定を攻めたり重いシーンに入ったりすると差が出やすくなります。
eスポーツ系や軽めのタイトル中心なら、最適化次第で 890M でも十分戦えます。AAA を高設定寄りで安定して遊びたいなら、RTX 3050 クラスの dGPU のほうが“楽に安全圏”に入りやすいでしょう。
Radeon 890M と Arc 140V、どちらが良いですか?
どちらも上位 iGPU 帯に属しますが、実測はノートの電力制限やメモリ構成の影響が大きく、状況で勝敗が入れ替わります。ある機種・検証では Arc 140V が上回ることもあれば、別の条件では 890M が肉薄して十分競ることもあります。
まずは“プラットフォーム選び”として、好みの CPU と筐体(電力・冷却)を優先し、iGPU名だけで固定の勝者を期待しないほうが現実的です。
iGPU では、CPU のブーストとメモリのどちらが重要ですか?
多くのゲームでは、最初に詰まるのはメモリ帯域(とデュアルチャネル構成)です。CPU ブーストが効く CPU 依存の強いタイトルもありますが、iGPU ゲーミングのベースラインを決めるのはメモリであることが多いです。
仕様を照合する際に信頼しやすい情報源
- Advanced Micro Devices, Inc. (AMD). (n.d.). AMD Ryzen™ AI 9 HX 370. AMD.
- Notebookcheck. (2024, June 2). AMD Radeon 890M - Benchmarks and Specs. Notebookcheck.net.
- Moass, D. (2024, August 11). Radeon 890M iGPU – 1080p benchmarks, FSR and more!. KitGuru.
まとめ(Quick recap)
Radeon 890M は、軽量・最適化が進んだタイトルなら 1440p ネイティブでも力を発揮し、重めのゲームでもプラットフォーム側(電力・冷却・メモリ帯域)が整っていれば 1080p で堅実に遊べる上位 iGPU です。まずは本記事のネイティブ表を基準にし、フレーム生成やアップスケーリングを考える前に、解像度と“重い設定を数個だけ”調整して 1% Low を安定させるのが効果的です。







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